余所者-よそもの-【 2 】
「どうかな?」
「最高。超旨い」
「よかったっ!」
パクパクとせっつくように食べ進めながら、俺は隣で開けられた女の子の弁当箱を一瞥した。
「弁当箱小さくね?それで足りる?」
俺に用意してくれた弁当箱の半分程もない、幼稚園児サイズの小さな弁当箱。
女は「全然足りるよ」と言うので、「だからそんなに身体が細いのか」と褒めた。
「もっと食べたほうがいいぞ。ほら」
と、自分の弁当の中身を女の口に持って行ってやれば、驚いたように目を見開いて、やっぱり顔を真っ赤にしながら小さな口を開けた。
「美味しい?」
「……私が作ったお弁当だし」
「それもそうだな」
女の子の心理を読み取ること。
その上で女の子を喜ばせること。
これは俺にとって数学のどんな方程式を解くよりも複雑で、楽しい。
だってどこまでいっても奥が深い。
女の子の言葉と心に寄り添って、とことん甘やかして、たまに少しだけ期待を裏切ってやって。
「卵焼き、ちょっとしょっぱい気がする」
「あ、ごめん。失敗しちゃったかな……。次は美味しく作るね!」
イロコイには塩味も大事。これが次に繋がる。
本当、奥が深い。
「来週三者面談だぁ。まだ受ける学部悩んでるんだよね」
「あー。確かにそんなのあったな」
「潤くんはもう志望校決まってる?」
「いや?俺そもそも進学しない」
「嘘だー」
「ホントだって。卒業したらホストになるんだ」
俺が真顔で言えば、女は「絶対嘘!」と言ってカラカラと楽しそうに笑う。
この進学校で進学しないヤツはほぼ居ないから、冗談とでも思ってるんだろう。
それがまさかの本気なんだよね。
親に話したらきっと泣くと思う。
それでも、本気でやりたいんだから仕方がない。