余所者-よそもの-【 2 】
お互いに昼食を済ませれば、弁当箱を片付ける女の子が「ねぇ潤くん」と、何かふいに思い出したように話しだす。
「”瑞生くん”って人知ってる?」
「もちろん」
「私同じクラスなんだけど、ほとんど授業受けてないんだよね」
その男の話題に、俺は少し気分が下がる。
隣に俺という男が居るにも関わらず、別の男の話題を出されることはこれまでも何度かあった。
しかも口から出る名前はほぼ全員同じ。
『瑞生』という名前。
俺よりも多く女の視線を集める男。
「授業受けてないのに、なんでいつもテストで満点取れるんだろう」
そう。
掲示板に張り付けられるテスト結果のトップはいつも瑞生だ。
だが、注目を集めるのは単に頭が良いという理由じゃない。
アイツの容姿はおよそ浮世離れしている。
色素の薄い髪や肌。
透けて見えそうなくらいに儚い見た目。
性別の境界すら曖昧にする程の美貌を持ちながら、誰も逆らえないような風格すらある。
加えて超天才児ときたもんだ。
容姿も頭脳も、全てを兼ね備える男。
なんつーか、ズルいだろ。
俺なんか髪を染めてピアスを開けて。
チャラチャラと制服を着崩してやっと注目を浴びることが出来た。
俺、ちょっといい男なんじゃねぇかって。
そんな風な自信すら持ちだしていたってのに。
世の中、どこにいっても上には上が居るもんだ。
「潤くんは瑞生くんと話したことある?」
「ないない」
「だよね」
俺と瑞生の接点なんて一ミリもない。
クラスも違えば、接点を持つ理由だってなかった。
それにこれは有名な話。
人離れした瑞生に漂う、”なんか話しかけ辛いオーラ”はきっと共通の認識。
孤高を望んでいるのか、なんなのか。
『瑞生くんに話かけたけど、無視された』
『瑞生くんは誰とも話さない』
こんなウワサが蔓延して、それが事実だと裏付けるように瑞生はいつも一人だった。
――だから、キッカケであるあの出来事が起こるまで。
今の俺とユキの関係性が嘘と思えるほど、俺らの距離はとても遠かった。