余所者-よそもの-【 2 】
事の発端はテストが終わって数日経った頃だった。
「あーマズイ」
「今回平均点高いな」
「追試だ……」
「上位層の顔ぶれは変わらないね」
学校の正面玄関ホール。
校内で一番大きい木製の掲示板に、テスト結果の順位表が丁寧に全員の名前付きで張り出される。
さらし首みたいなもんだ。
ある人間にとってはとても誇らしいことだし、ある人間にとっては絶望的な苦しみを噛まされる。
またある人間にとってはこんな茶番、とても興味の無いこと。
ろくに勉強をしなかった俺の点数と順位は散々なモンだった。
それでも、追試を免れることができたので俺にとっては十分すぎる合格ライン。
これで来月まで女の子と遊び惚けられる。
そんなことを考えながら、自分の置かれた順位よりも上。
視線を上げるにつれて、首が痛くなるくらい見上げた最上段にある名前。
そこにはやっぱり瑞生の名前。
どうやったらそんな芸当ができるのか、500点満点を付けていた。
マジで、一問の凡ミスもないとか人間じゃない。
ただの精密機械かロボットじゃねぇか。
「信じないぞ!!!」
その突拍子のない声は、玄関ホールに突然響き渡った。
感情を露骨に荒げた言葉に、辺りはざわざわとどよめく。
やがて人だかりの出来ている中心から、伝言ゲームのようにして状況が伝わってきた。
「柳くんだ」
「柳くんだって」
「ほら、二位の」
「万年二位のヤツだ」
柳 康太(ヤナギ コウタ)。
知ってる。
入学式の時、新入生総代の主席挨拶で登壇したヤツだ。
入学時はトップだったくせ、いざ入学すれば一位の座はずっと瑞生に奪われたまま。
俺は面白半分で声が聞こえた方向をきょろきょろと探した。
「どう考えてもっお、おかしいだろう!!どうして授業にも参加していない君が!いいいいいつも首位なんだ!?」
やがて見えた声の主。
そうだそうだ、コイツだ。
天然パーマのもっさりとした不潔そうな黒髪。
瓶底メガネに目を小さく映す、少し小太りなチビ。
こいつは子犬のようにぷるぷると震えて、指を差していた。
指を辿った先に居たのは、きっと登校したばかり。
気だるそうにスクールバッグを片方の背中に担ぎ、玄関ホールに続く階段の下で死んだ魚のような目をしている男。
――…瑞生だ。