余所者-よそもの-【 2 】


「な、なななにかっ小賢しい手を使っているんだろう!?」


瑞生は足を止めて、このもっさりメガネを見上げた。
敵意むき出しで鼻息の粗いコイツに、瑞生は依然として表情を変えない。


「あっああらかじめ問題を知っているとかっ!それとも、もしやカンニングじゃないだろうな!?」

「………」

「くっ!このぉぉ……そこで、待っていろ!」


そう啖呵を切って走りだしたもっさりメガネ。
テクテクと走る度にずり落ちるメガネを都度クイクイ、と元の位置に直しながら、右へ左へ揺れるようなダサイ走り方。

そんでもって、死ぬほど走るのが遅い。

そんなヤツを、瑞生は降り注ぐ太陽の光に目を細めながら、じっと動かず待っている様子だった。

そんな、まさかな。

――『瑞生くんに話かけたけど、無視された』
――『瑞生くんは誰とも話さない』

相手にするわけがないわな。


この正面玄関に集まった人間はもちろん。
周囲に散らばった人間全員がこの二人に注目をしていた。

とても神出鬼没で、授業に出ない、教室に居ない。
普段どこにいるかもわからない幽霊のような生徒。


それが今、おかしなヤツに突っかかられている。

どんな反応をするだろうか。
そうやってもっさりメガネと瑞生の対峙を、皆が固唾を飲んで見守っていた。


「――…さ、さささあ!!」

そう息を巻きながら、やっと階段を下りきったと思ったソイツは、息を切らせながら瑞生に近づき、

「答えてもら……ブッ、」


なんと、最後の一段を踏み外して瑞生の胸にダイブした。

俺の前に居た女が小さく「きゃああ」と黄色い悲鳴を上げる。


「あ……あああ、す、すすまない」

もっさりメガネは瑞生の胸板を押しながら体勢を整え、ズレた瓶底メガネのポジションを正す。

瑞生とは目と鼻の先。
やっとのことで前に立ったのに。


「………」
「………」

何かに当てられたみたいに、呆然として動かない。

おいおい。
芽生えてんじゃねーだろうな。

男だぞ、ソレ。


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