余所者-よそもの-【 2 】
すると瑞生は彫刻のように整った顔を一切崩さないまま、やっぱり気だるそうに口を開く。
「何か、俺に」
「……あ」
「用があったんじゃないのか?」
目の前のチビを見下ろしながら、言葉に余裕を持たせて喋った瑞生。
周囲からはざわめきよりも、息を飲んだような、溜息のような声が続々と漏れ上がった。
誰もが声を殺し、瑞生が発する一言一言に聞き耳を立てた。
「なっななな何かズルをしてるのか?」
「ズル?」
「そ、そうだ!毎回満点か、限りなくそれに近い点数だなんて、どう考えてもおかしいだろう」
「なぜ?」
「授業にも出ていない君が、どうしてそんな点数を取れるんだよ!」
唾を吐きかける勢いのソイツに、瑞生は綺麗な猫目を少しだけ丸くした。
「テストに出る問題なんて、決まりきってるじゃないか」
「は……はぁ?」
「あらかじめ範囲が設定されていて、出てくる可能性のある問題なんてせいぜい数百通り。逆になんで間違うの?」
瑞生は小首を傾げてみせると、何も言えなくなったソイツをその場に放って、何事もなかったかのように再び歩き出す。
「……ま、まままま待ってくれっ」
もっさりメガネは足をつんのめらせながら、必死で瑞生の背中を追いかける。
「何か、……ひ、秘訣は!?」
瑞生は振り返りもせずに、こっちの正面玄関とは逆の、裏庭の方に歩いていってしまった。
「範囲はどうやって絞ってる!?せ、先生のクセとか、傾向とかをリサーチしたりして――……」
やがて校舎の影に二人の姿が完全に見えなくなると、俺の周囲は思い出したみたくワッとざわめいた。
「瑞生くんの声、初めて聴いたぁ」
「俺も今度勉強の秘訣聞いてみようかな」
「瑞生くんって喋れるんだね」
「なんだよヤナギのやつ。喧嘩売ったのか、それとも媚に行ったのか」
のちにこれは『瑞生降臨』と揶揄され、数日間は話題として持ち切りになった。