余所者-よそもの-【 2 】
――――……
――…


「お疲れ。潤ちゃん」

「来てたのか」


ここは立ち入り禁止の古い校舎の屋上。
こっそり鍵を複製していた瑞生の隠れ家。

人知れず教室から消えていた瑞生は、いつもここで日がな一日を過ごしていたそうだ。

最近コイツと一緒に居ることも増え、ここは俺にとっても都合の良い第二の隠れ家になりつつある。


そう。
なんでこう、可愛い女の子の誘いを断ってまでコイツと……。
いや、

コイツらと。


「ユキくんはね、今日はちゃんと一限目の授業は受けたんだよ!」


わちゃわちゃと騒がしく、きっと母親が作ってくれたであろう茶色い弁当箱を俺たちの前に広げる……もっさりメガネ。

その真横でノートパソコンを開いて何やらパチパチとタイピングをする瑞生。


マジで、なんで?
どうして俺はここに居るんだろう。


「ユキくん」

自分の弁当に手を付けないまま、コンクリート上でわざわざ背筋をぴんと伸ばして正座をするもっさりメガネ。
その顔は茹で上がったタコのように真っ赤。


「ユキくん、ユキくん」

「……ユキって、俺のこと?」

「エヘヘヘヘヘ」

ヨダレを垂らす勢いで笑うとっても気持ち悪いコイツ。
瑞生はタイピングの手をピタリと止めて、興味を持ったようにじっと見つめた。


「なんでわざわざ、呼び方を変えた?」

「友達だからさ!」

「なんで友達だと呼び方が変わるの?」

「親しみの証なんだって!」


胸を張ったコイツは、バッグから一冊の本を取り出し、「じゃじゃーん」と見せびらかした。

重たそうな藍色のハードカバーの本。
どこかの大学の論文集だろうか。


表紙に書かれたタイトルは――『社会的動機づけとしての「友情」』


俺は呆れ返りながら、その本を顎で指して尋ねた。

「なんだ?それ」

「僕は今、友達ってものがどういうものなのかを学んでいるんだ」

「……は?」

友達の定義をわざわざ本で読んで勉強するヤツがどこにいるんだよ。
そう思ったけど、照れた顔をしているコイツは大真面目だった。

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