余所者-よそもの-【 2 】
「何度負けたら挑むのをやめる?」
「まだワイは一回も負けとらん!」
「………」
いや、お前。
毎回完膚なきまでに負けてんだろうが。
「わかった。じゃあ今日は明確に勝敗のルールを決めよう」
「よか」
「いいか?三回、先に攻撃を入れたほうの勝ちだ」
すぐさま始まったここ一番。
「――…ガァァァァッ……!覚悟し――」
――パンッ、――トンッ、――タンッ。
「はい、お疲れ様」
呆気なく、終・了。
例のごとく大振りの熊に対し、軽くカウンターを連続三回、華麗に決めて見せたユキの完全勝利。
コイツとの喧嘩も回数を重ねたことで、ユキはすでに熊の動きを全て読み切っているよう。
「なんでじゃあ……っなんでじゃあ……!」
「ご飯は?食べてきたの?」
尋ねたユキに、熊は屋上のコンクリートを舐めるように這いつくばりながら首を横に振った。
「お前と喧嘩ぁやると、ゲロるけん……」
「今日は打ち込んでないから平気でしょ。パンあるよ、食べる?」
「食う!」
やわらかく微笑みながらジャムパンを差し出したユキ。
もはや餌付け。
すると、パンを受け取る熊の胸元を見て、ユキは唐突に「サンコン」と呟いた。
パンを大きな口でかじりだした熊はコロン、と首を傾げる。
「サンコン?」
「お前の名前は、サンコン」
ユキの向ける視線を追って見てみれば。
コイツ、不良のクセして丁寧に胸に名札を付けていた。
そこに書かれた苗字は確かに――『三根』。
普通なら『ミネ』と読むんだろうが、たしかに『サンコン』。
不思議とその方がコイツにしっくりくる。
何度も何度も拳を交わし合ったユキにとって、コイツだって友達って事なのかもしれない。
サンコンがジャムパンをたったの二口で食い切ったところで、昼休み終了の予鈴が鳴った。
なぁんか、授業受ける気がしねー。
「俺いいや、サボろー。ユキは?」
「うーん。コタコ、次なに?」
「次は数学だよ」
「じゃあ寝る。コタコもサボる?」
屋上のコンクリートの上にゴロン、と寝っ転がったユキ。
すでに移動の準備をして立ち上がっていたコタコは、バツが悪そうに苦笑いした。
「ぼ……僕は出なきゃ。テストも近いし」
そうして、コタコ一人だけが寂しく、屋上を後にした。