余所者-よそもの-【 2 】
そう気が付くと、俺はユキの持つ本を力任せに奪い取った。
そのまま屋上のフェンス越しに、空に向かって思いっきり投げ捨ててやった。
分厚い藍色の本は、――バサバサ、と一瞬だけ、自由を求めて羽ばたいた鳥のように冊子を大きくたなびかせてから、真っ逆さまに落ちていった。
本が見えなくなると、後ろを振り返った。
「……ユキ。感情や心を、頭だけで理解しようとすんな。ちゃんと”ココ”で考えろ」
俺は丸めた拳を――トン、と、ユキの胸の真ん中に当てた。
「意味が、わからない」
ユキは俺の拳の触れる自分の胸元に一度目をやってから、迷い子のような目で俺を見上げる。
「ユキはどうしたいと思う?」
「わからないから困ってる。きっとコタコは俺と会いたくない。だから来ない。拒絶だ。俺に会ってもきっと良い顔をしない」
「じゃあ、どうなりたいと思う?」
「どうなりたい?」
「そう。お前はコタコと、どうなりたい?」
どうしたい、は現実的な手段。
どうなりたい、は未来の希望。
今を迷うお前は、足元の理屈ばっか追ってちゃダメだ。
あるんだろ、その先に望むものが。
だからそんなになって悩むんだろ。
コタコに対して、ここまで一生懸命に悩むことができるお前の心の内には、絶対にあるはずだ。
「俺は……コタコと、遊びたい」
脳みそで説明のつかない、非合理的な欲求が。