余所者-よそもの-【 2 】
「いい加減にしろ」
「誰のせいって、しいて言うならお前だよ、ユキ」
乱暴に電子タバコを取り返し、凄んでやった。
「俺がAnBarに行ったら、カナコちゃんは殴られて鼻から血吹いたまま更衣室に閉じ込められてた。熱もあったし部屋で寝かせてやろうと思ったら、そこは生ごみがブチ撒かれてた」
ユキの綺麗な猫目は見開かれたまま、瞬く間に吊り上がる。
「イジメまがいなことは多分今に始まったことじゃない。やったのはバンだ。サンコンに至っては見て見ぬふり。お前のためって言ってたぞ」
俺はソファに座ったまま、頭上にあったユキの胸倉を掴んで、引き寄せた。
怒りと、焦りと、疑念と。
そんな様々な感情の入り乱れるユキの瞳に、滾らせた自分の瞳をぴったりと、挑発するように至近距離でぶつけてやる。
「なぁ。お前の店どうなってんだよ。AnBarはカナコちゃんの職場兼自宅。逃げ場なんかどこにもない。ましてお前は『AnBarから出ていけ』って言ったらしいな?そのくせ俺に八つ当たるのはお門違いじゃねーのか?」
「……違う!」
俺の胸倉を掴み返してきたユキの表情は、もう収拾がつかなくなっていた。
複雑に、どろどろに、歪んだ。
「俺は言ってない!」
「じゃあ、なんで誤解をすぐに解いてやらない?カナコちゃん、お前に合わせる顔がねぇって、出ていけって言われたからって、今日のこともユキに絶対言うなってずっと一人であんなんなっても耐えてたんだぞ」
そこまで言葉を叩きつけてやれば、ユキの手は力を失った。
胸倉を突き放すと、ユキはローテーブルに足をぶつけながらドサリ、と床にケツをついて、そのまま頭を抱えて項垂れた。