余所者-よそもの-【 2 】
51話:枯れた涙
私の右手とユキの左手。
重なったままの手は、もうずいぶん長く、そのままだった。
「………」
「………」
どちらも何も言わず、沈黙だけが部屋に降り積もっていく。
するとだんだん、手のひらの感触が妙に気になり始めた。
私の手が汗ばんでるかもしれない。
気持ち悪いって思われてたら、どうしよう。
ちらりと、ベッドの上からユキの顔を見上げた。
ユキはこちらの視線にすぐに気が付くと、私の目尻をそっと撫でた。
「かぁこは、こんな時でも泣かないんだな」
ユキのその言葉に私はドキリとして、目を伏せた。
たしかにこういう状況だと、普通は泣いてるものなのかもしれない。
きっと、変だと思われてしまってる。
どうしよう。
なんて……言おう。
「………」
「まさかお前……泣けないのか?」
そう目を見開いたユキに、上手く返事を返すことができない。
だけど私が何も答えなくても、強張った表情から勝手に汲み取られてしまった。
「いつから泣いてない?」
「……どれくらい前ですかね。もうあまり覚えてないです」
「泣きたいとは思わないの?」
「思いますけど……出ないものは出ないし、その方が都合が良かったので」
私の涙はいつからか枯れた。
彼に暴力を振るわれるようになってからだったと思う。
最初は自分は大変なことになっちゃったんじゃないかって思ったけれど、彼と付き合っていく内に泣けない方が都合がいいことを知って、ずっとそのまま。
するとユキが突然、繋がったままだった私の右手をぐん、と引っ張った。
「……ユキさん?」
「………」
ベッドから引き上げられた身体が、そのまま吸い込まれるようにユキの腕の中にすっぽりと収まってしまう。