余所者-よそもの-【 2 】
――だからこそ、早く動き出したくなった。
「……私、今晩からAnBarに帰ります」
途端、部屋の空気が微かに変わる。
ユキの口角が、ム、と下がった。
「なんで?」
「明日のシフトはAnBarですし、用意もありますし」
「熱は?」
「もう下がりました。すっかり元気です」
「……AnBarに帰るのは明日以降にして。俺も一緒に行く。バンとサンコンには俺から話をするから」
……気のせいかな。
ユキの機嫌が悪くなった気がする。
バンとサンコンに話をするのが面倒だからかも。
「バンくんとサンコンさんには自分で話をするので、大丈夫です」
「お前が?何を話す気だ?」
「それは……その、これからも一緒に働く上で、お互い気持ちよく働けるように、です。まだどんな風に話すかは決まってないですけど」
「だったら俺から話す。同じ結果になるし、その方が早い」
そりゃあ、サンコンもバンもユキの言うことならどんな無理難題であれ、二つ返事で従うと思う。
でも、それだと意味がない。
「ちゃんと自分で伝えたいんです」
「また手を出されたらどうする」
「次の伝え方を考えます」
「怪我するだろ」
「怪我はいつか治ります」
私が言い返す度、ユキの顔はどんどん不機嫌になった。
でも、自分が間違っているとは思わない。
殴られるとか外傷はよほどでない限り、時間が経てば治る。
でも、一度壊れた人間関係は、放っておいたらどんどん悪化するから。
そんなこと、嫌というほど知ってる。
「お願いですから、ユキさんは何も言わないでください」
私がそう締めくくると、ユキは再びごろん、とソファに横になって、
「こんなことならずっと風邪をひかせておけばよかった」
人でなしとも思えることをボヤいた。