余所者-よそもの-【 2 】

52話:傷の持ち方



薄明り。
夜明け前の街は、人の気配をすっかり失っていた。

駐車場の隅で、一本だけ立つオレンジ色の街灯が、地面をぼんやり照らしている。

待ち合わせ場所に着けば、私より早く到着している野間に驚く。


「カナコさん、乙っす」


さっき電話を切ったばかりなのに。


「早すぎない?」

エンジンを切ったバイクに跨り、こちらに手を上げる野間へ駆け寄ると、野間は「あー、だって」とヘルメットを私に差し出す。


「僕、紫藤さんと一緒にリビドーに居たんで」

「そうなんだ」

「カナコさんから電話鳴って、めっちゃ喜んでたっすよ、紫藤さん」

「………」

「集まってた全員、ソッコーで帰されたっす」


ははは、と笑う野間に、私は上手く笑い返すことができない。


「カナコさん?」

顔を覗き込んでくる野間から目を反らした。

そんな風に何かを期待されてしまうと、臆病風に吹かれてしまう。


「早く、行こう」

「………」


野間は何も言わずバイクを走らせた。
あっという間にいつもの定位置にバイクは止まって、野間の手を借りてバイクを降りる。
停車位置からリビドーまでは、徒歩一分もない。

だからこの短い時間に交わす言葉は、いつも『またね』の挨拶になる。


「迎えはまた昼過ぎくらいっすかね。また後ほど」

私は扉の前で野間を振り返った。


「ううん。お迎えはいらない。ありがとう、野間くん」

そう伝えると、野間がこちらを向く気配がした。

だけど私は、その視線を受け止めることなく、


「やっぱり、カナコさん。ちょっと待った――」


手を伸ばしてきた野間をすり抜けるように、リビドーの扉を潜る。

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