余所者-よそもの-【 2 】
いつもならすぐに鍵は野間の手によって外側から施錠される。
今日はすぐに施錠されなかったので、自分で内側から鍵をかけた。
ガコ、ガコ、と足の裏で木を叩きながら、奥の扉を目指す。
もう、迷いはなかった。
――ガチャ、と静かなリビドーに音を立てて、シドへ繋がる重い扉を開けた。
「シド」
ベッドの上に片膝を立てて座り、煙草を吹かす彼。
ゆらゆらと上がる白い煙草の煙が霧のように狭い部屋に充満して、視界をぼやけさせた。
「どうした」
煙はみるみる晴れていく。
その向こうから現れたシドは、変わらない静かな眼差しで、真っ直ぐ私を見ていた。
「ぼうっと突っ立ってねぇで、こっち来い」
もみ消す煙草に目をやりながら、片腕をこちらに向かって伸ばす。
私は首を横に小さく振って、扉の前で足を止めたまま動かなかった。
「今日は、話がしたくて」
「……アッチ行くか」
ベッドから立ち上がったシドは、大きな歩幅で私の前までやってきた。
扉の前につっかえる私の手首をとって、「行くぞ」と手を引いたとき。
「私、もうここには来ない」
シドの足が、ピタリと止まった。