余所者-よそもの-【 2 】
53話:罪悪感の鎖
私は前を歩く野間の背中を、黙って追った。
彼は一度も振り返らないまま、薄暗い路地を迷いなく進んでいく。
リビドーから十分ほど歩いた頃。
野間は一軒の古びた雑居ビルへと入っていった。
中へと進み、古いエレベーターに乗り込み。
チン、と昔ながらの到着音が鳴って、降りた先。
そこは、集合アパートのような無機質な廊下が伸びていた。
いくつもの扉を通り過ぎて、やがて野間はその一つの前で立ち止まる。
入口には、"BAR"とだけ書かれた黒いプレート。
それだけが、この場所が飲み屋であることを辛うじて主張していた。
野間は慣れた手つきで重そうなドアを押し開けた。
見えた空間は、黒を基調にした店内。
こじんまりとした、小さなBARだった。
細長いカウンターには、真っ赤なチェアが七脚だけ並んでいる。
カウンターの中では、一人の柄の悪そうな男が煙草をくわえたまま、カラオケのモニターをぼんやり眺めていた。
ふと私たちの気配に気付くと、一拍遅れてこちらを振り返り、目を丸くする。
「お疲れ様です!」
野間の顔を見るなり背筋を正し、右手に構えていた煙草をカウンターの内側に慌てて隠した。
「出ろ」
野間が低い声で一言指示をすれば、男性は即座にバックヤードに消え、両手に荷物を抱えて戻ってきた。
そのまま頭を下げながらカウンターを通過し、せかせかと店内を出て行く。
あっという間に、店内は私と野間の二人きり。
野間は「どぞ」と並ぶチェアの真ん中を差してから、消えた男の代わりにカウンターに入る。
「カナコさん何飲みます?」
「ノンアルコールだったらなんでもいい」
「りょっす」