余所者-よそもの-【 2 】
「僕と違って、紫藤さんはいくらでもカナコさんに対して強引なことは出来た」
「………」
「紫藤さんがリビドーでしかカナコさんと会わないのは、カナコさんを街から守るためだ。紫藤さんの女と認知されてしまえば、いろんなヤツから目を付けられるから」
野間は私の方を振り返り、露骨に嫌な顔を向けた。
「リビドーに呼びつけたのは他でもない、カナコさんの都合じゃないですか。あなたがいつまで経っても瑞生さんのところから出ないから、わざわざ送り迎えまで寄こして、誰の目にも触れさせないようにコソコソあそこで会うしかなかった」
——『勝手に帰るな』
——『連絡無しでここには来るなよ?』
私一人で店の出入りをさせなかったのは、私のため……?
「紫藤さんはずっと待ってた。カナコさんがいつか自分の方を向くのを。そうしたらシトウに引き入れて、どんなことからも守るつもりだったんでしょうね」
野間はビールを一口煽ると、コン、と少し乱暴に瓶をテーブルに置いた。
「あの人はたしかに言葉足らずだ。でも、カナコさんだってあまりに鈍感すぎる」
野間の話は、前提が……おかしい。
その話を鵜呑みにすれば、まるでシドが本気で私のことを好きだったみたいだ。
だって、
「シドには、カエデさんがいる」
途端、沈黙が流れた。
野間はまっすぐと、何かの強い意志の宿った瞳をカウンターの先に向けていた。
「カナコさんは、愛って、一体なんだと思います?」
「何の話?」
「付き合うとか恋人って、どういう関係のことを言うんですか?」
「意味がわからない」
「愛のあるセフレと、愛のない恋人と、どちらに価値があると思います?」
さっきから、一体何の話をしてるの?