余所者-よそもの-【 2 】
訝し気に見つめていると、野間はビールを一口だけ煽った。
中身を確かめるように、瓶をクルリと回してからテーブルに置く。
「じゃあ、一組だけ例を挙げましょうか」
野間はビール瓶の外側についた結露を、指の腹でゆっくりとなぞった。
「カエデさんと紫藤さんの出会いは、高校だったらしいです」
描かれた一本の線は、すぐに新しい水滴に飲み込まれて消えていく。
「カエデさんはいいところのお嬢様で、一見すると紫藤さんとは接点があるようには見えない方でした」
「………」
「カエデさんは事あるごとに紫藤さんを構った。きっと好きだったんでしょうね。初めこそ相手にされていなかったけど、二人の距離が本当の意味で縮まったのは、紫藤さんがシトウの頂点に立ってからです」
「シトウの頂点?」
「はい。当時のシトウは今の”無法地帯”なんて言葉がチープに思えるほど荒れ切っていました。支配者は何度も入れ替わり、誰も街をまとめられなかった」
野間は瓶についた一本の線を、指先で何度も何度も塗り潰した。
「紫藤さんがシトウで幅を利かす度、二人の距離は縮まりました。”シトウの紫藤”なんて風に呼ばれだした頃には、カエデさんが紫藤さんの傍にいることが当たり前になっていた」
「その頃から二人は付き合ってたってこと?」
「一般的にはそう言えると思います。だけど、それはおよそ普通の男女関係ではありませんでした」
野間はそこで一度言葉を切った。
まるで、この先の話は軽々しく口にしたくないと言うように。
「初めは、よく見ないとわからない程度だったんです。気が付いた時にはカエデさんは目に見える程の傷を、いつも身体のどこかに負っていた」
初めはわからない程度。
いつも身体のどこかに傷。
……まさか。