余所者-よそもの-【 2 】
「紫藤さんは心から悔いた。カエデさんを守れなかったこと。それから、自分以外の誰かに大切だったものを傷つけられて初めて、これまで自分が如何に彼女に酷い仕打ちをしてきたかを思い知らされた」
――『だから……ダメなんだよ。お前が、俺のせいで誰かに傷つけられるのが』
いつか私にそう言った、シドの辛そうな表情が頭の中に浮かぶ。
「カエデさんは病んだ。そして、そんな彼女を紫藤さんはとても大事にしました。目を覚ましたように暴力をやめて、足げく病院に通って、心の不安定なカエデさんを傍で支え続けていました」
野間は、腹で撫でていたカウンターの傷にカリ、と爪を立てた。
「でも、おかしいんです。カエデさんは優しくなった紫藤さんに心を癒すどころか、どんどん、どんどん、更に深く、心を病んでいきました」
どうして?
答えを探すように野間の顔を見る。
前を向いたまま話す野間の目には、僅かに怒りが滲んでいるように見えた。
「そこで、ようやく腑に落ちました」
「………」
「ずっと違和感があったんです」
「………」
「僕にはずっと。彼女が、暴力すら受け入れることで紫藤さんの隣に居続けようとしているように見えていた」
「それは……とても一方的なものの見方だと思う」
「かもしれません」
野間は小さく頷いた。
「でも、病めば病むほど、紫藤さんは彼女の傍を離れない」
「………」
「病み続ける限り、彼女を手放せない」
「………」
「それが僕の見た事実です」
野間は目線をテーブルから上げて、真っ直ぐに前を向いた。
「カエデさんは、病み続けることでしか紫藤さんを繋ぎ止められなくなった」
「………」
「”罪悪感”という鎖で、今も紫藤さんを縛り付けてる」
それは、一体。
誰が救われるんだろう。