余所者-よそもの-【 2 】

54話:仲直り



気が付けば空は白み始めていた。

考えることをやめても、きちんと朝は来る。


――もう、ずいぶん見慣れた軒先。
鍵をゆっくりと回し開けて、AnBarの黒く重厚な扉をキイ、と引き開けた。

一歩足を踏み入れた途端、冷たい朝の空気が遮られ、よく知っている匂いに包まれる。

消灯された通路を進み、透明の扉を押し開く。


明かりのない暗がりの中、停止している壁面の水路から、ぽちゃん、と雫が落ちる音だけが響いていた。


手前でパチン、と照明のスイッチを入れる。

煌々とした光の中、L字の角を曲がると、静かなフロアが広がっていた。


何一つ変わりのない店内。

……帰ってきた。


意味もなく、カウンターのチェアと、テーブルを指先で撫でながら「はあ」と、一息を吐いた。


更衣室に入って、自室へと上がる。


「………」


ゴミで溢れていた私の部屋は、まるでそれが夢だったみたいに元通りになっていた。

ゴミ一つないどころか、なんならゴミがばら撒かれる前よりも心なしか整理整頓され、綺麗になった気がする。


――『ユキに絶交されたくなきゃ、上。カナコちゃんの部屋。綺麗に掃除しとくことだな』

サンコンやバンが掃除をしてくれたのかもしれない。


みんな、ありがとう。

そんな気持ちで、久しぶりに綺麗なベッドの上に横になる。


いつの間にかずっと握りしめていた指輪をコトリ、とベッドサイドへ置いた。


そうして、そのままスウスウと眠りについた。



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