余所者-よそもの-【 2 】
AnBarへ帰れば、時刻はもう朝六時。
さすがに皆帰っているだろう。
フロアに足を踏み入れて、すぐ。
カウンターでスマホを触っているユキの後ろ姿を見つけた。
辺りを見渡せば、リンコはソファで手足を豪快に広げて眠っている様子。
完全に飲み潰れている。
私はユキの座っているチェアの横に立って、「お疲れ様です」と声をかけた。
「サンコンさんは?」
「もう帰った」
後ろに立つ私を見上げてくる彼の目を見れば、ユキだって酔っぱらってるみたい。
心なしか目が潤んで、白い肌がほんのり赤らんでる。
「俺も帰る」
チェアを後ろに引き、立ち上がろうとしたユキの身体がフラ、とよろけた。
咄嗟に出た手でユキの身体を支えると、
「……あの」
彼はそのまま、私の肩にコテン、と顔を埋めた。
「いい匂い」
「お風呂に入りましたから……」
ユキはとろん、とした目で私のことをじぃっと見つめてきた。
「かぁこ」
「はい」
「一緒に俺んち、帰る?」
「帰りませんよ」
ここですぐに眠れるのに、わざわざユキの家にいく必要はない。
ユキだって酔っぱらうと人恋しくなるのかな。
甘えた彼の様子に、少し笑ってしまう。
緩んだ空気。
ユキはふっと目を細めると、私の顔を覗き込むようにして、その顔を近づけてきた。
「じゃあ……」
「なんですか?」
「キス、してみる?」
なぜ。
この酔っ払いは、とんでもないことを言い出す。