余所者-よそもの-【 2 】
自室に着くと、チェストからユキのお古のシャツとズボンを出して、リンコに渡した。
大きなゴミ袋の口を広げて、「脱いだものはここに入れてください」とリンコの足元に置く。
後ろを向いて着替えだしたリンコに、私も背中合わせになって着替えることにした。
「アンタってさぁ。世渡り上手って感じよね」
「そうですか?」
「うん。人から嫌われるとかなさそう」
「そんなことないですよ」
「弱々しくって、誰からも守ってもらえて。いい子ぶりっこ」
「悪口じゃないですか」
「アタシ、そういう女って大っ嫌いなの」
「そうですか」
「礼は言うけどね」
素直じゃない人だな。
汚れがつかないように慎重になって、シャツを脱いだときだった。
ダ、ダ、と踵を床に踏み鳴らす音が響く。
ハッと後ろを振り返ると、ズボンに片足を通したまま大きくよろめいたリンコが、勢いをつけてこちらに倒れ込んでくるところだった。
「……うわっ!」
「いたたた……」
リンコを支えようとした私は、その体重を受け止めきれずに一緒になって床に倒れ込む。
身体の大きなリンコが私の上にかぶさってきて、押しつぶされてしまいそう。
リンコは慌てて起き上がろうと床に手を突っ張ったけれど、ピタリと静止した。
「アンタ……その身体」
アルコールに血走ったリンコの目が、服を身に着けていない私の肩、胸元、それから前髪が流れて全開の額を点々と辿っている。
言いたいことはすぐにわかった。
身体に残る古傷にびっくりしたんだと思う。
さすがに痣はもうないけれど、根性焼きや切り傷は消えない。
慌てて両手で身体を隠したところで、リンコも顔ごと目を背けて、その場に立ち上がった。
「よく……このアタシの前で服、脱げたわね」
「別に」
「それ、いじめ?」
「いえ。DVです」
「そう」
見てしまったことを気にしているのか、静かになったリンコ。
私は着替えを済ませてから、再び一階に下りた。
汚れたままだった床を片付けてから、ミネラルウォーターとバッグを持って再び二階へ戻った。