余所者-よそもの-【 2 】

リンコは静かな声で受け止める。


「却下の理由は?」

「教育コスト。ソイツは未経験からこの店のコストをかけて育てた人材だ」

「じゃあ、払うわ」

「ソイツが欠ければ採用費がかかる」

「それも払う」

「引継ぎ期間も必要だ」

「かかる費用は払うって」

「人員配置だって崩れる」

「全部払う。売上歩合から差し引いてもらっても構わない」

「………」

「金払えば文句ないってことよね?」

「いや」


ユキが一瞬フリーズする。

目頭を軽く抑えて、何やら深く考え込んでいる。


「ある。文句は……ある」

「なによ」


ユキは目を伏せたまま黙り込んだ。


やがて顔を上げる。
その表情は何かの迷いが去ったような顔つきで。

いつもの気だるい様子の、見慣れたユキだった。


「かぁこはAnBarの従業員。お前の都合や、契約の都合で移動はさせない」

「………」

「契約にコイツが必須って事なら、この契約は俺から降りる」

「アタシほどのドル箱を従業員一人のために捨てるっていうの?」

「ああ。白紙で構わない」

「そう。ずいぶんと頭の悪い経営者なのね」


ピリつく空気。
しん、と気まずい無音が、私たちの間に割り込んでくる。


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