余所者-よそもの-【 2 】
「好きな音楽はありますか?」
「特には」
「好きな音楽のジャンルはどうですか?ポップスとかロック、ジャズでもなんでも」
「それなら、クラシックでしょうか」
「そしたらBGMクラシックに合わせますね」
今だと他にお客はいないし、しばらくはクラシックのプレイリストをかけておこう。
スピーカーから、静かなクラシック音楽が流れ出す。
すると、なんだろう。
強烈な違和感が肌を刺した。
格式が高い繊細なピアノの旋律がフロアに満ちていく。
途端に、空間の温度が一段階下がったような気がした。
クラシックは失敗だったかもしれない。
それからいくつか話題を振ってみた。
けれど、彼女はあまり話したくないのか、生返事しか返ってこない。
やがて私は、話しかけるのをやめた。
あまりしつこくてもいけない。
静かに飲みたいのかもしれないし。
カウンターの向こうで、女性は一杯の真っ赤なカクテルを見つめている。
それを、少しずつ。
唇を湿らせるように、ゆっくり、ゆっくりと喉に運んでいた。