余所者-よそもの-【 2 】


カクテルが溶けた氷ですっかり薄まった頃。

女性が席を立とうとしたので、傍に駆け寄った。


「お手洗いですか?」

「いえ、帰ります」


滞在時間は一時間ほど。
カクテルだってほとんど減っていない。

あまり楽しくなかったのかもな、なんて思いながら、サンコンに「チェックです」と声をかけた。

その時。
立ち上がった女性の身体がグラリ、と大きくよろめいた。


「大丈夫ですか?」


咄嗟に腕を掴んで支える。

その瞬間、彼女の身体が驚くほど細いことに気が付いた。

俯きながら力なく私に寄りかかる女性は、とても具合が悪そうだ。


「帰れますか?」

「………」

「タクシー呼びましょうか?」

「いえ、タクシーには乗りません。すぐ、そこなので」


それなら、と私はエプロンの結び目を後ろ手に解いた。


「サンコンさん、彼女具合悪そうなので、送ってきてもいいですか?」

「暇ですし構いませんよ。助かります」


チェックを終え、女性と一緒にAnBarを出た。

肩を貸すと申し出たけれど、彼女はそれを拒み。
かろうじて自分の足でふらふらと歩き出した。


< 240 / 285 >

この作品をシェア

pagetop