余所者-よそもの-【 2 】
ここまで私は、彼女の歩幅に合わせるようにして歩いてきた。
具体的な目的地を聞けないまま、ただ後ろをついて歩くことしかできなかったから。
なのに、シトウのエリアに入った途端。
彼女はピタリと足を止めてしまった。
「………」
「………」
耳に響いてくる街のざわめきが、沈黙を紛らわせる。
「あの、」
さすがにそろそろ。
彼女の顔を覗き込んだ。
「………」
彼女はシトウの喧噪をじっと見つめていた。
その瞳に、今日初めて明かりが灯った気がした。
何か強く心を動かされる、美しい芸術品でも眺めているような、そんな眼差しだった。
その視線の先にあるのは、いつも通りのシトウの風景。
殴り合う男たち、罵り合う女たち。
閉じたシャッターの前で酒瓶を抱えて眠る老人や、キワドイ格好で客を待つ制服姿の女の子。
決して、目を輝かせて見るような景色じゃないのに。
「見つけたぜ!!!」
その荒々しい怒号は突然。
夜の喧噪を鋭く裂いて、こちらまで響いた。
声の方を見ると、遠くで派手な格好をした若い男が、こちらに向かって走ってくる。
思わず後ろを振り向いたけれど、誰もいない。
誰かを追ってるようだけど、まさか、私たち?
慌てて隣を見れば、彼女は迫りくる男をじっと見ていた。
「もしかして……追われてますか?」
「はい」
その二つ返事を聞いた瞬間、私は彼女の手を強く握りしめ、走り出していた。