余所者-よそもの-【 2 】
「……あの」
こんなこと、今日さっき出会ったばかりの人間が言うことじゃない。
嫌がられるかもしれない。
それでも、聞かずにはいられなかった。
「何か、辛いことがありましたか?」
「どうして?」
「私には、この街は少し悲しく見えます」
この街は、何かを諦めてしまった人で溢れている。
どうにもならなくて。
辛くて。
自暴自棄になって。
それでも、どうにか今日を生きている人たちの街だと思うから。
女性は表情のない顔で私を見た。
「あなたは幸せ者なんですね。だからこの街と、この街の人間を見下している」
「そうじゃ、ありません」
私はこの街に救われた。
彼に捨てられて、シドに拾ってもらって。
ユキに預けられて、AnBarで生活をするようになって。
いろんな人に出会って、助けられてきた。
「私もついこの間までとても悲しかったんです」
言葉にすると、胸の奥が少しだけ痛んだ。
「その時は、この街が心地よく感じました。不幸なのは自分だけじゃないって、そう思えたから」
「………」
「でも、だからこそ。誰かに少し優しくされただけで、すごく嬉しかった」
絶望的な場所だからこそ、見えたものがあった。
小さな親切も。
何気ない言葉も。
差し伸べられた手も。
あの日の私には、全部が生きる理由みたいに思えた。
無秩序、無法地帯。
シトウ、糸冬の、終わりの街。
だけど。
終わりの街だからこそ。
ここから始まる人も、きっといる。
「私、一人じゃ上手く生きられなかったんです」
シドが手を差し伸べてくれたから、立ち上がれた。
ユキは、その先に進む勇気をくれた。
「もしかすれば。ここはどんな場所より、希望に満ちた街なのかもしれませんね」