余所者-よそもの-【 2 】
その場にいた全員が、一様に呆然としていた。
時間が止まったみたいだった。
凍り付いた時を動かしたのは、目の前の女性、カエデだった。
深々とお辞儀をしていた彼女が、ゆっくりと顔を上げる。
――思わず、私の息が止まった。
恐ろしいほどに恍惚とした、その笑み。
彼女は私と視線を合わせることなく、くるりと踵を返す。
そして。
私の靴を履いたまま、シドに駆け寄っていく。
「シド、聞いて!とっても楽しかったの!」
「………」
「ほらほら、見て?アオイの撮ってくれた写真。とっても上手になったと思わない?」
「……帰るぞ」
「あっ……」
強引に手を引かれた拍子に、彼女の抱えていた何枚もの写真が、バサバサと地面に落ちた。
束になって落ちたそれはバラバラに広がり、風に吹かれて何枚かが私の足元へと滑り込んでくる。
その内の一枚を手に取った。
写真に映っていたのは、――私だった。
点々と地面に散らばる写真へ、視線を這わせる。
どの写真にも、どの景色にも――
……私がいた。
恵西(エニシ)で買い物をする私。
AnBarで看板を出す私。
野間のバイクに乗る私。
リビドーから出る私。
なに……これ。
地面に落ちた無数の”私”。
その不気味な四角い紙切れを、手前から順番に目で辿っていく。
やがて、その視線の最奥で。
カエデさんの手を引いて歩き出す、シドの後ろ姿が映り込んだ。
私は、ただ、ぼうっと突っ立っていた。
気が付くと、アオイが目の前に立っていて。
私が手に持っていた写真を、無言で回収した。
ふと見ると、地面にはもう、一枚の写真も散っていない。
アオイの小さな手に、角の不揃いな写真が冷たく重なっていた。