余所者-よそもの-【 2 】
58話:素敵な場所
カエデと出会ってから、数日が過ぎた。
あれ以来、特に変わったことはない。
それなのに、時々。
あの人の笑顔が、不意に頭をよぎる――
「……ナコ」
遠くの方で誰かが私を呼ぶ声がする。
夢かな。
だって私まだ寝てるし。
「――カナコ!!」
「……ぐえ!!」
お腹への突然の衝撃で、強制終了される睡眠。
「え?」
私は何度かパチパチと瞬きをした。
「おはよ!」
首を傾げて微笑む、リンコ。
寝起き眼をごしごしと擦る。
間違いない、リンコだ。
「何、してるんですか」
リンコはAnBarの二階で眠る私の、この腹の上にどっかりと腰を落としていた。
なんで私の部屋にいるの。
なんで私の上にいるの。
ぼうっと半目のまま睨みつける。
けれど、リンコはそんなことお構いなしに、ぐん、とその笑顔を近づけた。
「ショッピング行くわよ!」
そう宣言したリンコは、寝ぼける私もそっちのけ。
私の髪を部屋にあった櫛で乱暴に梳かし、スマホだけを握らせると。
二階から一階へ。
一階から外へ。
押し出すようにして私を連れ出した。
表に待たせてあったタクシーへ滑り込むように乗り込み、目的地を伝える。
タクシーは容赦なく走り出した。