余所者-よそもの-【 2 】
「………」
「よし、これ履いてみて!」
目の前に差し出された、白いパンプス。
白は白でも、レース仕立てなので目に優しい柔らかなホワイト。
屈んだリンコが私の足首にそっと触れて、パンプスを足に通した。
「どう?」
両足に履き、立ち上がると。
五センチほどのヒールのパンプスは、私に自然と胸を張らせた。
リンコが私の両肩を掴み、鏡の前に連れて行く。
「うん、とっても素敵」
「素敵ですけど……素敵すぎて、ちょっと私には分不相応な気がします」
靴は見るからに高そう。
今の自分の格好はさておきにしても、自分には立派過ぎる。
するとリンコは、その艶やかな口を静かに開いた。
「靴はね、一番その人が出るのよ」
私は鏡越しにリンコを見た。
「どんな場所へ行きたい人なのか。どんな人生を歩きたい人なのか」
リンコは私の足元を見つめていた。
「だからアタシ、靴だけは妥協しない」
そして、パンプスをポンポン、と撫でるように叩く。
「いい靴は、ちゃんといい場所に連れてってくれるから」
そう言って目尻を下げ、ニッコリと笑った。
「今日はアタシが、アンタをもっと素敵な場所へ連れてく。これはアタシの誓い」
そう話したリンコに、沈んだ心が優しく撫でられた。
今日はリンコにとっての大事な記念日。
私だってこの晴れ舞台に花を添えたい。
そう思うと、余計なモヤモヤは、今日くらいは忘れられる気がした。