余所者-よそもの-【 2 】
「カエデさんって入院してるんだよね?」
「………」
「……病院から、いなくなったってこと?」
「………」
「私も探す」
「いらない」
「人手は多い方が……」
アオイは背けていた顔を、キッとこちらに振り返った。
「いらない!!」
その叫び声は、深夜の静かな街に痛いほど響き渡った。
アオイはすぐにはっとした様子で、冷静さを取り戻すように目を伏せた。
「紫藤が探してる」
「………」
「だから、お前ひとり居たって変わらない」
……だったら。
私はエプロンのポケットから、メモとペンを引っ張り出した。
自分の電話番号を手早く書き込み、アオイの手に強引に握らせる。
「これ、番号。私の」
「いらない」
「お願い」
「………」
「なんでもいい。何かわかったら教えてほしい」
ぐっと差し出したメモを、アオイは頑なに受け取ろうとしない。
押し返してくるアオイの手に、私も頑固になって両手で抵抗した。
カサカサと音を立てて、メモはアオイの手の中でみるみるぐしゃぐしゃになっていく。
やがてアオイは根負けしたように、「放せっ」と私の手を強く振り払った。
そのまま、闇へ吸い込まれるように消えていく背中。
私はその場から動けなかった。
胸騒ぎだけが、どうしても消えてくれなかった。