余所者-よそもの-【 2 】
62話:マイム・マイム
「放して……っ!!」
「ごめん……むり」
「お願いっ」
「こ、殺されるから……」
何かに怯える男。
弱々しくとも、力は男のそれで、私がいくら暴れてもその腕を振りほどくことはできなかった。
やがて、景色が変わる。
アスファルトの路面から、真っ赤なカーペットが敷き詰められた建物に入ったようだった。
途端、変な匂いが鼻をくすぐる。
お香のような、だけどお香じゃない。
煙草とも違う、どこか甘ったるくて、焦げたような異質な匂い。
――ギイ、と重たい扉を開ける音がした。
するとその異臭はもっと強烈になって鼻の奥を突き、一気に頭がクラクラした。
「デック」
男が誰かに話しかける。
「ん-?」
「お……女、いる?」
「なんでぇ?お前が持ってきたんじゃないの?」
「俺は……き、気分じゃない」
「見せてよ」
ゴトゴト、と音を立てて、私の身体が乱暴に下ろされる。
そこは、真っ赤な台の上。
私は、ビリヤード台の上に転がされていた。