余所者-よそもの-【 2 】
「デック!何それ、一人用?」
目の前に並ぶ男が、また一人増えた。
「んー……」
「なんだよ、使わないなら寄こせよ」
笑った男が、私に向かって手を伸ばしてくる。
私はそれをデタラメに腕を振り回して、パシ、と必死に払いのけた。
「あれ?乗り気じゃない?」
「その子たぶんシロートだよぉ」
「最高じゃん」
男は私のいるビリヤード台のコーナーにある暗いポケットに深く手を突っ込み、赤いキャンディのような怪しい包みを取り出した。
私の目の前で、包みがぱりぱりと乾いた音を立てて開かれていく。
開いた、と思った次の瞬間には、私はビリヤード台の上に力ずくで押し倒されていた。
「――……っ」
ゴン、と台が重たい音を立てた。
男は私の上に跨り、鼻と口の両方を手のひらで強く押さえ付けてくる。
……息が、できない。
喉を鳴らすように口の中で舌を擦れば、中にいくつかの小さな錠剤のようなものが滑り込んできたことに気がつく。
飲み込んじゃ、いけない。
私は男の腕を掴み、足をバタつかせ、必死に抵抗した。
真上で私を抑え付けながら、男が徐々に目をひん剥いていく。
いやだ。
苦しい。
呼吸が、酸素が。
……息、したい。
本能的にそう思った瞬間、喉が勝手に上下した。
――ごくん。
「お薬、飲めたね」
にやり、と粘っこい笑みを浮かべた男。
パッと手が離され、ようやく呼吸を取り戻す。
激しく咳き込んだ喉から、変な音が漏れた。