余所者-よそもの-【 2 】
63話:おもちゃ箱
此処は糸冬町、Z地区の一角。
ハプニングBAR――『おもちゃ箱』。
赤いカーペットの敷かれた一階フロア。
薄暗い照明。
どこからともなく流れる、マイム・マイムの狂った旋律。
壁際に並んだ、ビリヤード台。
「………」
その一台の上で、カナコは静かに横たわっていた。
彼女の傍らには、オーバーサイズの黒いパーカーを着た男が寄り添うように立っている。
白い髪。
不健康そうな青白い肌。
目の下の濃いクマ。
華奢で小柄な身体の、幼顔。
”地下の売人”の通り名で呼ばれるその男は、カナコを観察した。
首を横に倒し、脈を取り。
瞼を開かせ、瞳孔の具合を診て。
最後に口をこじ開け、舌の強張りを確かめた。
「トんじゃったか」
意識はある。
けれど、ここから先を記憶に残す力は、もう失われていた。