余所者-よそもの-【 2 】
カナコを攫ってきた男だった。
地下の売人は大股でその男の元へと歩み寄ると、小さくなる男の目線に合わせるように、その場にしゃがみ込んだ。
「ね」
「………」
「あの女の人。どうして連れてきたの?」
「……い、いや。そっ、その辺にこ……転がっ――」
――ゴスッ!!
回答の途中で間髪入れず、地下の売人の拳が男の顔面を打ち抜いた。
「もう一回聞くよ?ちゃあんと、答えてね」
「………」
「嘘でもホントでも、僕が嘘だと思えば、その瞬間に殺す」
「………」
「だから、できるだけ本当のことを言えた方がいいかもね?」
「………」
地下の売人の声が、一段階低く、下がった。
「誰の差し金?」
「シ、シシシトウです……」
「うん。そうか。シトウの、誰?」
「……た、たたた多夜……」
「ん。よく言えたね。偉いよ」
ニッコリと笑って立ち上がり、男に背中を向けた。
男は『助かった』と胸を撫でおろす。
――だが、その安堵が絶望に変わったのは、次の瞬間だった。
「……え」
地下の売人の背中が、目の前で一瞬にして消える。
次に姿を捉えたときには。
空中で鮮やかに身体を捻った彼が、男に向かって脚を振り下ろしていた。
――ドォン……!!
床に叩きつけられた男の身体は、ピクリとも動かない。
「……死んで良し」