余所者-よそもの-【 2 】
地下の売人はしばらく、瞳に天井のライトを反射させながら、思考を巡らせた。
やがて何か決断をしたように、ゆっくりと歩き出す。
「デック、警報止めて」
そう言って、ナイフの柄を向けて差し出した。
「あいぃ」
デックは一つ返事をしてナイフを受け取る。
「ちょっと遊んでくる」
地下の売人はニカッと笑うと、パーカーの裾を腹の前で丸めて袋にして、ビリヤード台から重たい球をぽいぽいと集めだした。
ずっしりとした重みを確認すると、不敵に後ろを振り返る。
そして。
ユキを取り囲む人だかりに向かって、ビリヤードの硬い球を容赦なく投げつけた。
――ゴン。
玉は見事に有象無象の後頭部にヒットし、ズルりと倒れる。
地下の売人は足を進めながら、ポイ、ポイ、ポイ、と次から次へ玉を投げ、百発百中で命中させていった。
「……おらおらおらおら。退け。退けって」
目的地を塞いでいた分厚い肉壁が、ゴン、ゴン、ゴンと鈍い音を立てながら次々に崩壊していく。
やがて、声が沸き立った。
「地下の売人!?」
「地下の売人だ!」
「地下の売人が帰ってきた!!」
地割れのようだった。
声が波及して、地下の売人を恐れて避けるように、人が、道が、拓けていく。
ちょうどそこで、プツリ、と大音量の音楽が止んだ。