余所者-よそもの-【 2 】
「…………」
野間はだらん、と脱力した私の手首を掴み、グイと引いて歩きだす。
「では、お邪魔しました」
静まり返ったフロアに、野間がそう言い置いて、背を向けた時だった。
「一つ、聞いていいか?」
カウンターから響くユキのその声は、氷のように冷たく聞こえた。
「なんすか?」
野間が足を止めて、ゆっくりと振り返る。
「シトウの紫藤は、女一人の面倒も見れない程、甲斐性がないのか?」
「うーん。まぁ、そっすよね。僕もカナコさんはシトウに置いた方が良いと思っているんです。でもね、物事には順序ってモンがありますから。外野がとやかく言うのは野暮ってモンですし、それに――」
そこまで軽薄に言葉を紡いでいた野間の口元から、ふっと笑みが剥がれ落ちる。
声が、低く歪んだ。
「……シトウにも入れねぇド底辺野郎が。生意気言ってんじゃねぇぞ」
その瞬間、――バキ、と骨の壊れる派手な音が鳴り響いた。
「……ア……」
あんぐりと口を開けたまま気を失ったのは、バン。
サンコンはユキへの侮蔑の言葉に、理性が完全に吹き飛んだようだった。
床から弾け飛ぶようにして立ち上がると、丸太みたいな拳を固め、野間に向かって突進した。