余所者-よそもの-【 2 】
「何か飲むか?」
「ううん」
小さく首を横に振って、新しいチェアに腰掛けた。
私は……これから仕事がある。
長居はできないし、するつもりもない。
そんな私を察しているのかそうでないのか。
「………」
シドは苦い顔をしながら、無言でグラスに氷を入れていた。
やがて――コトン、と音を立てたグラスの底。
私の目の前には、透明の水が言葉なく置かれた。
シドも同じグラスを手に持って、私のすぐ隣に静かに腰掛けた。
「………」
「………」
シドはなかなか話そうとしなかった。
何も言わない私の隣で、ただ静かに煙草を吸っている。
私はただ正面を見ていた。
隣から広がってくる煙草の煙が白く散っていくのをぼうっと眺めながら、どうしてシドは今日この時間、私を呼んだのかを考える。
いつもは会えばすぐに抱き合った。
こんな風に二人並んでカウンターに座るなんて、初めてのことだった。
すると、ふいに布の擦れる微かな音が聞こえる。
隣の腕が、視界の端で動く。
「……なにっ?」
シドの指先が私の肩に乗る髪をそっと後ろへと払った。
思わず後ろに仰け反ると、彼は追いかけてくるように手を伸ばし、私の服の襟ぐりを強引に、少しだけ広げた。
そこは、シドが噛みついた場所。
私は嫌なことを思い出して、反射的に自分の手でそこを覆い隠す。