余所者-よそもの-【 2 】
「お前は余所者だから知らねぇんだろ。教えてやろうか?紫藤って男のことを」
バンは少しだけ天井を仰ぎ、怒りで強張っていた肩をストン、と落としてから、ぽつりぽつりと語り始める。
「ある族がシトウで暴走をした。暴走に参加した輩の中で一人、必死で『馬鹿な真似はよせ』と、仲間を、チームを守ろうとした男がいた。……俺のダチだ」
――『龍翔鳳鱗(リュウショウホウリン)。知ってるだろ、隣町で一番の族だ』
それはいつかバンが話していた、彼の所属するチームの話だった。
だとすればこれは、バンがシドを憎む理由。
バンはきっと思い出したくもない過去を腹の底から絞り出すように、大きく息を吸ってから口を開いた。
「……暴走で頭に血が上ってるメンツを必死に説得して、殴られながら何度も頭を下げて説得して。さぁシマに帰るぞって、やっとのことでみんながバイクの向きを変えた」
「………」
「逃げ帰るみんなを守るように、最後尾についた、アイツを……俺のダチを、……紫藤は、」
バンはキリリ、音が鳴る程の強さで拳を固く握りしめた。
「あの……クソ野郎は、その車で単車ごと轢(ヒ)いた……!!ゆっくりと、スローモーションみてぇに見えたのは俺だけじゃない。それは”見えた”んじゃねぇ。確かに紫藤の車がゆっくりと、アイツの……小せぇ身体に乗っかったんだ」
――『暴走してたら紫藤の車にダチの単車がこかされた。もう単車に乗れねぇ、ソイツ』
「大事になって、やっとサツが動いたと思えば。出頭してきたのは汚ねぇジジイだった。俺は玉砕覚悟で紫藤にツメた。どういうことだって。そしたら――」
「………」
「『ガキの相手に相応しい。はは!いい替え玉だろ?露天街に転がったジジイに三万でも握らしゃあ、喜んでしょっ引かれて行ったぞ。飯が出る上に寝床が付くってなぁ』」
バンはシドの声を真似たように、冷酷にあざ笑った。
直後、ぐす、と鼻をすする短い音が虚しく響く。
顔を見なくてもわかった。
バンの背中は、あの日からずっと、泣いたままだったのかもしれない。
――『なんで、それを止めに行ったダチがやられなきゃいけねぇんだ?』
――『俺は、俺のダチがやられたから、だから紫藤にやり返すんだ』