余所者-よそもの-【 2 】
営業が始まると、バンは宣言通りに容赦なく私を追い込んだ。
「どけよ」
ホールを歩いていれば、すれ違いざまに強く肩をぶつけられた。
その拍子に、手に持っていた灰皿の中身が床一面にバラバラと散乱する。
フロアの薄暗い照明の中、私が床に膝をついて散らばった吸い殻を拾い集めようとすると、手の甲をバンの靴底がグリグリと踏みつけた。
「邪魔」
客に酒を提供しようとすれば、後ろから突き飛ばすように背中を押された。
よろめいた拍子にグラスの中身が零れ、客の膝をアルコールで濡らしてしまった。
私は何度も頭を下げて謝り、クリーニング代を支払うことを約束して、その場をなんとか収めた。
「クソ女」
カウンターで酒を作ろうとすれば、私の手元を狙ったように酒瓶を倒された。
そのボトルは店でも特に高価なウイスキーだった。
中身がほとんどなくなってしまったことをサンコンに報告をすれば、「わざとではないにせよ」と前置きをされた上で厳しく叱られた。
その日の晩。
全ての営業が終わり、へとへとになって部屋に戻ると。
「………」
ベッドの上には再び、ゴミがばら撒かれていた。
――『バンくん、ゴミ出しをお願いします』
――『はいよ』
営業終了後のサンコンとバンのやり取りを寂しく思い返す。
バンは本気だ。
本気で、私をここから。AnBarから追い出す気でいるらしい。