余所者-よそもの-【 2 】
この人は、リンコさんは。
ユキにとって、ただのお客じゃない?
だって、変だ。
ユキは客相手に自分の時間を割くような人じゃない。
それに、自ら客をAnBarに連れて来るなんてこと、これまで一度も無かった。
リンコは納得のいかない様子で「ふぅん」とボヤくと、私に視線を移す。
「カナコはいつもお店に居るの?」
「いえ、週に3日です」
「そう、そしたら――…」
リンコがスマホを取り出すと、遮るようにユキがこの人の腕をグイ、と引いた。
「行くぞ。ソイツは仕事だ」
「いいじゃない、少しくらい」
「ソイツのことは構わないでくれ」
そう言われた瞬間、呼吸の仕方を忘れた。
私は呆然としたまま、ユキの冷え切った横顔を見つめることしかできなかった。
その顔に、以前のユキの優しさはない。
ただただ無関心。
いや、それよりももっと。
どちらかというと拒絶するバンに近いような嫌悪の感情さえ、その表情の奥に透けて見える気がした。
喉の奥が、きゅっと締まる感じがして、苦しい。
二人は私のすぐ目の前で、いくつか親密そうに言葉を交わすと、再びぴったりと隙間なく腕を組んで、私の前を通り過ぎていった。