余所者-よそもの-【 2 】
「実際、他にもいっぱい女いるし」
「……そうなんですか?」
ユキはたしかにモテる。
でも、どれも『客』と言っていて、彼女とか、そういう特定の女関係のことを私は知らない。
リンコが初めてだった。
「そうよ?客にはだいたい手を出してるじゃない」
ユキは私の雇い主だ。
こういう生々しい話を聞くのは、とても複雑な気持ちになる。
とても、嫌な気持ちになる。
何か話題を変えよう。
住んでいる場所でも、趣味でもなんでもいい。
けれど、開いた口から言葉を発するよりも早く、リンコが質問を放り込んできた。
「カナコはユキちゃんとチューした?」
「い……いえ。そんなこと、するわけないです」
「ええ、なんで?アタシ妬かないわよ。言ってよ」
「本当に」
「嘘。あの男のことだもん、絶対してる。ユキちゃん、チュー上手よね?」
「……あの」
「もちろん本番もとっても上手」
「リンコさん、もう……」
もう、やめてほしい。
けれどリンコは止まらない。
まるで私に言い聞かせるみたいに、有難迷惑極まりない共有を押し付ける。
「でも、ユキちゃんってちょっと変態よね」
「………」
「これはさすがにアタシしか知らないと思うんだけど。ユキちゃんって――――……」
そう言って、耳打ちされた具体的な情事。
「――…っ!?」
私はいよいよ我慢が効かなくなって、跳ねるようにリンコから後ずさる。
その拍子に――ガタ、とローテーブルに膝が当たって、手前にあった自分のシャンパングラスが倒れてしまった。
「……すみません!すぐ拭きます」
かろうじてリンコの洋服を汚さないで済んだのが不幸中の幸い。
「大丈夫よ。気にしないで」
ダスターを取って、テーブルと床に零れたシャンパンを拭き上げる。
リンコは、そんな惨めにも見える私をソファの上からニコニコと眺めていた。