余所者-よそもの-【 2 】
「街に馴染むことは、いいことなんですか?」
「そりゃおまん次第やろ」
それは、どう捉えればいいんだ。
『この街に馴染む』と『堕ちた』は、どちらの言葉も普通に考えればいい意味じゃない。
実際に私は今、生き方がわからない。
この街で何を選び、どう生きればいいのか。
もう、ずいぶんと迷子になってしまっている。
「ここは終わりの街。終わりには何もない」
しわがれているのに、不思議とよく通る、八賀の重たい声。
歩む道を真っ直ぐと淀みなく見据えるその深い瞳を、私は横からじっと覗き込んだ。
「終わりが在るから、始まりが在る。堕ちるだけ堕ちることができればええ。そこでしか見えん景色があるでな」
「どういう意味ですか?」
「水に溺れる人間は、もがけばもがくほど沈む。力を抜いて初めて浮く方法がある」
……そんなこと言われても。
今の私はもがき方すらわからなくなっているのに。
力の抜き方なんて、もっとわからない。
「八賀さん。私いま自分がわからないんです。どうしたいのか、何をしたいのか。何をやってみても全部上手くいかなくて」
「せいぜい、全部受け入れろ」
そこで、見慣れた軒先についた。
八賀の家だ。
八賀が――ガララ、と年季の入った引き戸を開けると、中から香ってきた懐かしい匂いに、やっぱりおじいちゃんの家を思い出した。
「人生、よぉ味わえよ」
そう言って私から荷物を受け取るなり、ぴしゃりと扉を締めた。
扉が締まる手前の八賀の顔は、前歯が全部見えるくらいわざとらしく笑っていた。
「だから、わかんないってば……」
閉じた引き戸を見つめながら、私はその場に深くしゃがみ込んだ。