余所者-よそもの-【 2 】
私は八賀の家を離れると、行くあてもなく、ただ歩いた。
ポケットにあるスマホだけが、やけに重く感じた。
財布はAnBarに置いたまま。
シドや野間に連絡をすれば、今夜眠る場所くらいはきっとある。
それでも、なぜだか連絡をする気にはなれなかった。
やがて露天街の隅にある公園のベンチに一人腰かけた。
アンモニアの嫌な匂いが立ち込める中で、ひたすらにぼうっと、寂しい空を眺めた。
そこには絶えず流れ続ける雲。
目に映る模様は形を変え、留まることを知らない。
この煩わしさの全部、あの雲と一緒に流れちゃえばいいのに。
そんなくだらないことを願う。
空の色は濃くなり、やがて淡い朝の光へと変わっていった。
どれだけ私が頑なに立ち止まっても、時間は平等に進む。
朝日が昇れば、私はAnBarに帰ることにした。
すっかりみんな帰宅して、誰もいない。
静まり返ったAnBar。
私は二階へは上がらず、一階の更衣室で就寝の用意をした。
だって、部屋のベッドはいくら片付けても片付けても、翌日にはゴミが復活するから。
もういっそ片付けをやめたのって、いつからだっけ。
もう、覚えてもない。
私は薄手のブランケットを更衣室のロッカーと壁の隙間に敷いて、今日も眠った。