余所者-よそもの-【 2 】
44話:紳士
私は自分の身体を引きずるように移動して、更衣室の扉を開けた。
視界に飛び込んできたのは、フロアの真ん中で仰向けになって倒れるバン。
そして、その上に馬乗りになってバンの胸倉を締め上げる、潤の姿。
「あのぐちゃぐちゃの部屋も、カナコちゃんの傷も。全部お前がやったんだな?」
「お前はなんも知らねぇだろうけどな。……アイツ、紫藤とデキてんだぞ!?」
「だからなんだ」
「お前はいいよな?あの尻軽女のせいで店がどんな目に遭っても、関係ねぇんだから」
潤の手に、さらに力が籠った。
バンは組み敷かれながら、それでも首を太くして負けじと怒鳴った。
「そーだろ!いってもお前もシトウの人間だもんな!?シトウでチャラチャラ女転がしてるだけのただのクソホストが。首突っ込んでくんじゃねーよ!」
「カナコちゃん傷つけて、お前は何がしたいんだ」
「不要なモンをこっからだすんだ!ゴミだ、ゴミ!あんな女!」
「……そうか。そのためにこうやって……」
――バキィ!と潤の拳がバンの頬にめり込んだ。
「女の顔面殴りつけて。こうやって……」
――ブチブチ!とバンの襟首にかけられた潤の両手が、バンの制服のボタンを全部割き飛ばした。
「ロクな抵抗も出来ない女を傷つけたのか?」
「………」
「弱いお前は、紫藤に敵わないから。だから自分より弱い女に手を上げたのか?」
「………」
「答えろッ!!……バン!!」
潤は再び胸倉を乱暴に掴み、息がかかるほどの距離でバンを怒鳴りつけ。
悔しそうに顔を歪めたバンをしばらくの間睨みつけると、ドサリ、とその手を放した。
「お前のこと、ガキだとは思ってたけど。クソの付くガキだったとはな」
バンはもう力なく横たわったまま、ただ天井を見つめていた。
フロアの照明を反射した瞳は、涙にうるんでいるように見えた。