余所者-よそもの-【 2 】
「……言っとくけど、サンコンも俺と同じ気持ちだぜ」
負け惜しみのように小さく嘆かれた言葉に、潤はゆっくりと立ち上がり、バンに背中を向けて歩く。
カウンター手前に無言で立つサンコンの前でピタリと足を止めると、厳しい顔つきのまま口を開いた。
「お前、カナコちゃんがああなってるの、知ってたな?知っててシカトしたな?」
「……私の判断は、全てユキにあります」
「このことユキは知ってんのか?」
「このこと、とは?」
「今の店の状態だ。すっとぼけんな」
「ユキにとって必要な情報は伝えてあります」
「これが不必要なことだっつーのかよ」
「私はそう判断しました」
サンコンの言葉に、バンはまるで威勢を取り戻したように声を張り上げた。
「ユキだってコイツを持て余してんだ!だから俺たちが代わりになって行動してやってんだよ!何も知らねぇのはお前だけだぞ、潤!何も知らねぇクセにしゃしゃり出てく――」
「何もわかってねーのは、テメェらの方だ」
潤は冷たい目でそう吐き捨ててから、スーツジャケットの裾をぴんと引いて整えた。
スーツの皺がなくなると、姿勢よく歩き出し、私の前にやってくる。
床に這いつくばったままの私の身体を横抱きにして、すくと立ち上がる。
「バンはともかく……サンコン。お前は付き合い長いんだから、いい加減わかれよ」
「何をですか。私には、わかりません……」
顔を暗くして深く俯いたサンコン。潤は構わず、フロアを真っ直ぐに歩いた。
「とりあえず、ユキに絶交されたくなきゃ、上。カナコちゃんの部屋。綺麗に掃除しとくことだな。俺からの助言はそんだけ」
潤はそう言い残すと。
私を抱いたまま、しんと静まり返ったAnBarを後にした。