愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
「まぁ、大変……! お医者様には連絡をしているのかしら」

「恐らく連絡は入れていると思いますが、到着まではまだ時間がかかるでしょうね」

 花屋で働く少年は、エリシアも顔を見かけたことがある。ダナは何度か会話をしたこともあるそうで、顔見知りが怪我をしたことに不安げな様子だ。

「それなら、うちに運びましょう。応急手当くらいはできるもの。お医者様には、ここへ来てもらえばいいんだし」

「ですがお嬢様、どんな人物かも分からない相手を屋敷内へ入れるのは……」

 ザカリアスは険しい顔でそう言うが、エリシアは首を横に振った。すぐそばで怪我をしている人がいるのを知って、放置するわけにはいかない。

「目の前に困っている人がいるのに、手を差し伸べないなんてことがある? あなたはお父様に報告を。ダナは、怪我人をうちへ運ぶように伝えてきてくれるかしら」

 エリシアの指示にダナはうなずいて駆け出していく。ザカリアスはどこか不満げにしていたものの、やがて「分かりました」とうなずいた。

 父親の執務室へと向かうザカリアスが、微かに舌打ちをしたような気がするものの、そんなことには構っていられない。エリシアは怪我人を受け入れる準備のため、通りがかったメイドに湯を沸かし清潔な布を用意するよう伝えた。

 やがて、怪我人が運ばれてきた。見覚えのある十代半ばほどの少年と、中年の男性の二人だ。少年は手足に大きな擦り傷を負って痛みに顔を歪めているものの、命に別状はなさそうだ。大事になってしまったと、申し訳なさそうに身体を小さく縮めている。
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