愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
自らのドレスが汚れるのにも構わず、エリシアは傷の手当てをしていく。細かい擦過傷はたくさんあるものの、大きな怪我は額だけのようだ。
やがて医者が到着し、ロジェリオと御者、そして少年の怪我の状態を診てくれた。その結果、重傷であるロジェリオだけが病院へ運ばれることになった。
エリシアを訪ねた帰りに事故に遭ったということで、責任を感じた父親が、ファリノス家の馬車でロジェリオを病院まで送り届けることを申し出る。ロジェリオも、その提案をありがたく受け入れてくれた。
「私も、一緒に行きます」
今のところ命に別状はないとのことだが、病院でもっと詳しく検査をしてからでないと心から安心できない。エリシアの言葉に、父親も同意してうなずいてくれた。
「あぁ、そうだな。ぜひそうしてくれ。ザカリアスは、アルベルダ公爵家へ連絡を。くれぐれも失礼のないようにな」
「かしこまりました」
一礼して、執事が去っていく。公爵家への連絡を任せることに少し不安はあるものの、さすがにファリノス家の名を背負って妙な真似はしないだろうと思うことにする。
馬車に乗り込んだエリシアは、ロジェリオには座席へ横になってもらうよう促す。彼は大丈夫だと言い張ったものの、父と二人で説得した。
ゆっくりと走り出した馬車に揺られながら、エリシアは馬車の床に膝をつき、ロジェリオの手を握りしめる。彼のぬくもりを感じていないと、不安でたまらないのだ。
「シア、俺は大丈夫だから。きみも座って……」
「だめよ。私には、傷口を押さえておく役目があるの。リオは、あまり身体を動かさずにじっとしていて。頭を打っている可能性もあるのよ」