愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 きっぱりとした口調で言うと、ロジェリオは微かに苦笑を浮かべてうなずいた。そして彼は、そっとエリシアの手を握り返してくれる。

「ごめん、シア。心配をかけてしまった」

「謝るのは私の方だわ。だって、うちに来なければリオが事故に遭うことはなかったもの……」

「シアのせいじゃない。シアは、何も悪くないよ」

 涙ぐむエリシアの頬に、ロジェリオは手を伸ばす。そのまま軽く引き寄せられて、まるで口づけをするかのように顔が近づいた。

 急な密着にエリシアは戸惑うものの、ロジェリオの顔には甘さが一切ない。彼は、エリシアの耳元に唇を寄せた。

「……今なら車輪の音で会話がかき消されると思うから、伝えておく。この事故は、仕組まれたものだ」

「え……?」

 思いがけない言葉に目を見開くが、ロジェリオは真剣な表情だ。

「俺は馬車ごと吹き飛ばされて動けなかったんだけど、目の前に折れた車軸があった。そこには衝撃で折れたものとは思えない、鋭利な刃物で傷つけられたような傷があった。馬車は定期的に整備をしているし、車軸に傷なんて入っていたら、絶対に気づくはずだ。そもそも、あの程度の衝撃で車軸が折れるなんて考えられない」

「それは……誰かが車軸にわざと傷をつけたということ……?」

 声をひそめて、エリシアは問う。誰かといっても、そんなことをするのはザカリアスしか考えられない。

 ロジェリオは、厳しい顔でうなずいた。

「恐らく、本当ならもっと先で事故を起こすつもりだったんだろう。出発したばかりでまだゆっくり走らせていたから、これくらいの怪我で済んだんだ。もっとスピードを出していた時なら、どうなっていたことか。それに、人通りの多い場所で馬車が横転していたら、怪我人はもっと増えたと思う」
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