愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた

 あの少年の飛び出しは、むしろ幸運だったのかもしれないと、ロジェリオはため息をついた。

「だけど証拠はないから、全て憶測にすぎない。馬車を急停車させたことで、車軸に思わぬ力がかかった可能性だって捨てきれないから」

 ロジェリオはそう言うけれど、エリシアはザカリアスが仕組んだことに違いないと思う。

 誰よりも先に事故の様子を見に行っていたことや、怪我人を運び込むことを躊躇するような言動。そういえばあの時、ザカリアスは小さく舌打ちをしていたような気がする。

 御者とやりとりをしていたメイドが、怪我人は二人だと聞いていると言っていたのは、もしかしたらザカリアスがロジェリオの存在を隠そうとしたのではないだろうか。

 いよいよザカリアスがロジェリオを狙って動き始めたのだと、恐ろしくなる。

 エリシアは、再びこみ上げてきた涙を拭って、震える息を吐いた。

「……やっぱり、私たちは一緒にいてはいけないのかもしれないわ」

「シア」

「だって、またあなたを傷つけてしまった……。次は命を落とすかもしれないのよ? そんなの、私は耐えられない……」

 堪えきれず涙がこぼれ落ち、エリシアはしゃくりあげる。ロジェリオと一緒にいたいという気持ちは確かにあるのに、一緒にいることで彼の命を危険に晒すのではないかという恐怖がどうしても払拭できない。

 身体を震わせて涙を流すエリシアの手を、ロジェリオはぎゅっと握りしめた。

「俺は、あの執事がシアへの想いを暴走させていることの方が恐ろしいよ。あいつの目的は、俺を殺すことではない。シアを手に入れることなんだよ。もう、いつ強硬な手段に出てもおかしくない」
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