愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
しばらく談笑しているうちに、ヴィクトルは随分とロジェリオに懐いたようだ。ロジェリオも弟の通う学園の出身なので、知っている講師の名前や講義の内容などで盛り上がっている。いつもは淡々としていてあまり表情を変えない弟が、幼い頃のような楽しげな笑みを浮かべるのを見て、エリシアもなんだか嬉しい気持ちになっていた。
「じゃあ、そろそろおれは、外で待っているね」
「あら、一緒にいればいいのに」
立ち上がったヴィクトルを引き留めようとしたエリシアの言葉に、弟は苦笑する。
「いつまでも二人の邪魔をするほど野暮じゃないよ。帰る時は、声をかけて。一緒に帰ろう」
そう言って、弟はあっという間に病室を出て行ってしまった。
ヴィクトルと入れ替わるようにして、ファリノス家からの連絡を受けた公爵夫人も駆けつけた。エリシアはあらためて、事故の経緯を説明する。証拠はないものの、自分の家の使用人がロジェリオを傷つけたかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。もちろん、口にすることはできないけれど。
公爵夫人は、ロジェリオの顔を見て重篤な状態ではないと分かると、ホッとしたように表情を緩めた。
「事故に遭ったと聞いたから驚いたけど、それくらいの怪我で済んでよかったわね。ロジェリオは、いい機会だからゆっくりと休みなさい。少しは睡眠不足が解消するに違いないわ」
「あぁ。それと、飛び出した少年をあまり責めないでやって」
「分かっているわ。あなたの怪我も大したことはないし、大事にする気はないわよ」
そう言って、公爵夫人は微笑む。公爵家の馬車と事故を起こしてしまったと少年は震え上がっていたから、穏便な対応にきっとホッとするだろう。