愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 朝食の席で、ヴィクトルが話しかけてきた。エリシアは、食事の手を止めてうなずく。
「えぇ。昨日は雨で行けなかったから、今日は絶対に行きたいの」
「そう。雨で足元が悪いだろうから、気をつけて。ロジェリオさんにもよろしく伝えておいて」
「ありがとう。ヴィクトルは、いつもより早く出るのね」
「うん。ちょっと、講師と約束をしていて。――あぁ、ザカリアス。おれのジャケットはどこかな」
 紅茶を飲み干して立ち上がったヴィクトルは、執事を連れて食堂を出て行く。それを黙って見送り、きっとエリシアのそばから離してくれたのだろうと心の中で感謝した。
 食事を続けていると、今度は父親がエリシアを呼んだ。
「実は、御者のミゲルが体調を崩してな。どうやら厩舎の者たちの間で質の悪い胃腸風邪が流行っているらしい。だから今日は、代わりにザカリアスが病院まで送ってくれるそうだ」
「え……」
 思いがけない話に、エリシアの胸がどきりと痛いほどの音を立てた。馬車と御者台という空間の隔たりはあるものの、ほとんど二人きりという状況は絶対に嫌だ。
 ロジェリオに会えないのは残念だけど、今日は見舞いに行くのを諦めようかと考えていると、父親が口を開いた。
「わたしも今日は城へ行く用事があるから、一緒に乗って行こうと思ってるんだ。病院は城の手前にあるから、エリシアは先に降りるといい。帰りには、また迎えに行ってあげるから」
「そうなんですね。お父様と一緒にお出かけできるのは嬉しいです。ぜひ」
 エリシアはホッとして笑顔を浮かべた。父親が一緒なら、ザカリアスだって不審な動きをすることはないだろう。
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